TAKENAKA CORPORATION /masaomi yonezu

Y factory/Y 工場増築

Shiga, JAPAN

October 2006

 

 

concept

 

 

「合理の果てに現れた素形」

本プロジェクトは、工場棟の増築であるが、建築主と共に、建物の合理化を進め、配置、構成、構造形式、部材・材料のひとつひとつまで、要求されるシビアな性能との間で検証を重ね、慣習的にではなく、具体的な検証を通して設計作業を進めてきた。もはや、ここで要求されるコストは、ある仕様で建屋をポーンと建てるようなプレファブのようなやり方では到底成立し得ないレベルでもあった。そうして進めてきた設計作業の末に現れた建物は、既存建物と、新設される建物が絡み合うように重なり合い、様々な特殊解が層状に織り成した建物。

一見単純で無機的な建物は、しかし、そこでの課題と解決がそのまま定着したかのような複雑で、プリミティブな様相を示していた。このプロジェクトでは、出荷機能を増強するために、新たに3000㎡ほどの出荷スペースが要求された。まず、立派な片持ちトラスによる15M×100M(1500㎡)の既存トラックヤードの庇下スペースを利用すべく、それに平行し、同じく15M×100Mの鉄骨架構を新設した。2つの異なる架構によって領域化されたスペースは、それを強調するかのように亀裂のような光のスリットが入っているが、これは固さの異なる二つの構造形式のエキスパンションジョイントとして機能する他、奥行きの深いスペースにおいて、自然光を内部に導き、必要に応じて空気を循環させる等、省エネルギーの役割も十分に果たしている。また、新たに新設される架構と、インテリア化されることになった既存庇下部は「一室」として利用されるため、長手方向のブレースは使い勝って上NGとなる。そこで、水平力(地震力)は溝型形状をした妻壁のRC壁で集中的に負担し、水平力と鉛直力を分離した混構造として、ブレースを無くし、柱を細くし、さらにはS造純粋ラーメン構造と比較しても、トータルコストも抑制することが可能となった。また、建具や使用材料などの諸要素は全て既存デザインを踏襲し、新たなデザインボキャブラリーは一切無い。床材を黒色から、反射率が高い緑色としたぐらいであろうか。壁面に穿たれたサインも、そこに新たな要素を付加するのではなく、コンクリート打放しの型枠の抜きによりロゴを浮かび上がらせることとした。コンパネ一枚分の深さで製作されたロゴマークが、夕暮れ時には、炙り絵のように浮かび上がってくる。余分な贅肉を徹底的に排除することは、コストの合理化を超えて、建築的にもあるフィードバックをもたらしているように感じた。それは、慣習的でもなく、禁欲的でもない、その場で求められている課題と解決が等身大で現れた、新たな建築の素形である。